まだ現段階で製造元や販売元による原因特定ができていないのでコメントは差し控えようと思っていたのですが、これだけ大きな騒動になれば全く書かないわけにもいかないかなと。
まず農薬で人が中毒になり、口もきけないほどの麻痺状態になるというのはどういうことなのかを考えてみましょう。
農薬には食品への残留基準があって、その数値を超えたら危険ですよーというのはどなたもご存知と思います。その残留基準というのは色々科学的データを元にして決められるのが通常ですが、そのデータの1つにADIという数値があります。
ADI=Acceptable Daily Intake 日本語では一日摂取許容量と言います。単位はmg/kg/day。人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康に影響を及ばさないと判断される量。問題のメタミドホスという殺虫剤には、0.004という数値が定められています。
例えば体重50kgの人を例にとりますと、0.004mg/kg/day=0.2mg/50kg/day。すなわち一生毎日0.2mg摂取しても何ら問題はないと言えます。
仮にギョーザに使用されたキャベツにこの農薬が残留していたとしましょう。キャベツのメタミドホス残留基準値は1ppm(=0.000001=0.0001%)。これを超える濃度が検出されると違反になります。ただし普通に農薬を散布する程度では、この1ppmを超えるというのはそうそうありません。
今回問題になった冷凍ギョーザは40個560g入りです。1人5個食べるとしましょう。ギョーザの重量は70gです。70gのうちキャベツの量はいかほどでしょうか。多くても30%くらいかな。21gです。この21gに0.2mg以上の農薬が混入している場合、その農薬が占める重量比は、0.2÷210=0.1%ほどです。(もちろんこれを毎日食べ続けても健康には何も影響がないわけです)
この0.0001%と0.1%は比率を求めている対象が違うので本来比較することはできませんが、ぱっと見た感じ余りにも濃度が高いなーという印象。今回のギョーザでは人が倒れるほど残留していたわけで、普通に畑で農薬を使いすぎてるといったレベルの問題ではないなぁというのが、まず最初の印象でした。
それにメタミドホスという農薬は加熱で分解されやすく、ギョーザを加熱調理しても人が麻痺状態になるというのは残留というよりも、薬剤が直接ギョーザに触れたか混入したと考えるのが妥当です。
その証拠に実際にひどい中毒症状を起こしたのは現在まで10人ほどに留まっており、家族で食べていた状況を考えると該当商品は3袋ほどでしょう。今回問題を起こしたものと全く同じ製造ロットで回収対象になっている商品は約1万5千袋もありますから、もし原材料に農薬が残留していた場合には被害はもっと拡大していたはずです。つまり原材料への残留ではなく、製造過程での故意か過失による混入と考えることができます。と思っていたら、今日の報道では外装袋に縦約1mm、横約3mmの穴が開いていたそうですね。これは人為的な故意による事件の可能性が非常に高いでしょう。
事件だとするならば、この問題は非常に限定的な範囲で収束するものと思われます。中国産の全てを悪者扱いするのは妥当性を欠いており、私達はもう少し冷静になるべきだと思います。ひょっとしたら日本国内の流通段階での混入(=愉快犯?)なんて落ちもあるかもしれません。
問題を起こした物と同じ商品は食べないようにするのは当然ですが、それ以外の商品については今回の原因が完全に究明されるのを待ってから対処してもいいと思います。
(2月2日01:00追記) 2月1日夜からマスコミ各社で一斉に「ピンホールがあった事実」「メタミドホスの残留は130ppmもあった事実」「故意または過失による混入説」を報道し始めました。業界関係者であれば私が上記で書いた通り、極めて不正常な状況で混入した可能性があることは最初から気づいていたはずで、それ見たことかと思っている人も少なくないと思います。甘利経済産業相は大変冷静なコメントをしていましたが、それ以外の桝添厚労相、民主党などは相変わらず中国を最初から疑ってかかる言動を続けています。これ、万が一、日本国内での混入なんて落ちが付いた日には、大変な国際問題に発展すると思いますが、果たして大丈夫なんでしょうか?私はつい先日、マスコミの表面的な報道に踊らされる盲目的な日本の大衆について警鐘を鳴らしたばかりですが、今回日本が自分で自分を傷つける最悪の結末にならないことを祈るばかりです。